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小説・勉強会(65)最善観③


「言いくるめるつもりはないんだ。厳密な証明はできないっていうのが定説だと思うし、もちろん、僕にもできない」
「そうですか」
「安保法案が衆議院を通過する前日にさ、高校時代の友人とさ、国会前に行ったんだよ」
「そうなんですか。僕もいたと思います」
「そうだろうね。でさ、そのとき、その友人が言ったんだよ」
「こんなに声をはりあげて抗議活動しても結局、多数派が強行採決すれば、衆議院を通ってしまう。たぶん明日ね。意味ないじゃないかって」

「僕もそう思いますよ」
「でもさ、そうでもないと思うんだよ。結局、すべてが連続しているわけだから、仮に何か突発的なことが起きて、幸運にも、法案が否決されたとしよう。それで世の中が良くなると思うかい?」
「そうですね。そういうことは起きないと思いますが、仮にそうなったとしても、良い世の中にならないように思いますね」
「反対にさ、明日、法案が通ってしまうことで、危機感が高まり国民的議論が深まって、多くの人が、これまで当然視してきた憲法や立憲主義の有難さを悟ったりするかもしれない。世の中の仕組みをもっと理解しようと奮い立つ若者が多数生まれるかも知れない。それが事後的に見たら、社会を良くする決定的な要因になるかもしれない。そう思わない?」
「確かに。そういう可能性もありますね」

「だろう。『塞翁が馬』と同じさ。目の前にある一つの事象のうわべだけみて、一喜一憂すると全くトンチンカンなことになっちゃうって、経験的にも知ってるだろう」
「ええ。一喜一憂しちゃいけないって、なんだか剣道の教えに通じるところがありますね」
「そうさ!」
「塞翁が馬なんて、古臭い話だと思ってたけど、なんだか有難い感じがしてきますね」
「ほんとにそうなんだよ。僕らには今眼前で起きていることが、単純に自分にとって金銭的に損か得かすら計算できないんだよ。本当の意味では。うわべの計算はできるよ。だけど、それに頼るといずれ大きく間違える。まして、金銭以外のすべての損得計算なんて、人間の限度をはるかに超えているんだよ」
「最善観って、そういうことなんですか」
「いまだ、うまく言えないんだよ。ただね、七瀬はこのところ、いつもイライラしていて、怒りっぽいだろう。そして、言っちゃ悪いけど、敗北主義さ」
「う!」
「言葉に詰まるだろう。だって、デモをしても、ブログ書いても、友人に訴えても、あるいはお寺で修行しても、あるいは自ら権力者になって社会を変えてやろうとか考えても、何やっても、どんな風になっても、うまくいかないと心の底では思ってるんだよ。そういう考え方では幸せになれないし、周りの人も不幸にするんだよ。そしてさ、無意識的にそういう自覚もあるだろう。結局何やってもだめだと。だから、敗北主義なんだよ」

(続く)
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